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第4回 尺八リサイタル『時を穿つ』2021

更新日:2023年6月29日

「時を穿つ (うがつ)」と題し、尺八の伝来から発展、現代と未来を一気に表現いたします。終曲には望月京氏に委嘱した「尺八・三味線のための新作」を初演。ゲストには三味線の本條秀慈郎氏をお迎えします。


〜尺八の伝来から発展、現代と未来を貫き、「今」の尺八を問う〜


 謎に包まれた尺八の歴史を紐解きたいという欲求と、

 新しい尺八の世界を産み出したいという渇望が同一線上に並んだ。

 別々に見えていたものが「今」の私を作り、息づかせてくれている。


                           小濱明人





【タイトル】

第4回 小濱明人 尺八 リサイタル「時を穿つ」


【開催日】  

2021年12月22日(水)


【場 所】  

東京都 渋谷区 代々木上原 MUSICASA


【演奏曲目】

1、蘇莫者 (正倉院尺八 -復元楽器- による)

2、初手・安田・手巾 (一節切 -復元楽器- による)

3、懺悔文・焼香文 (旧京都明暗寺所伝・古典本曲)

4、産安 (古典本曲)

5、耿 (西村朗作曲)

6、ぎんの音 (望月京作曲)委嘱・世界初演


【出演者】

小濱明人(尺八)


【ゲスト】

本條秀慈郎(三味線)


【委嘱作曲家】

望月京(作曲)





 

「第4回 小濱明人 尺八 リサイタル」コンサートレヴュー/渡部晋也(舞台写真家・音楽ライター)


 クラシックや和楽器の奏者が年に一度催すリサイタルは、一種の研究発表という意味合いがあると思うし、そうであるべきだと思っている。その点で尺八奏者の小濱明人によるリサイタルは理想に近い出来映えだったと思う。昨年までは若手奏者である小濱が巨大な尺八世界の岸壁に立ち向かい、果敢に挑んでいく姿を見せられている印象だった。しかし今回は小濱の尺八を通して観ている側にいくつもの気づきがあるリサイタルだった。


 前半は正倉院の時代から現代まで、長い尺八の歴史を4曲で辿るプログラムで一曲目は雅楽の楽器として扱われていた古典尺八。続いての曲は戦国時代に武将の間で流行したという一節切(ひとよぎり)による演奏だった。古典尺八が奏でたのは確かに雅楽的な旋律で、これが雅楽の舞台であったらどんな風になるのかが気になった。そしてここまでの音色はとても素朴なものとして響いていた。


 三曲目は虚無僧が吹いた尺八。5つの孔をもつが、管の内部は自然のままの“地なし管”だが、ここから大きく世界が変わったことに聴衆は気が付いたはずだ。楽器の響きが明らかに変わり、膨らみがあって立体感を感じる音色に変化したのだ。さらにノイズ分や倍音成分も加わってよりドラマチックになっている。しかし続く四曲目で小濱の尺八はさらに変化を見せる。ここで使ったのは現代の尺八である地塗り管。楽器としての完成度が上がっている尺八だ。虚無僧が修行の一環として奏した3曲目から、4曲目の幕末〜明治期に活躍した神保政之輔が伝えた『産安』を比べると、歌心が数倍にも膨れあがり、祈りの旋律であるチャントから歌に進化する瞬間を魅せつけられた気がした。


 後半は現代邦楽を2曲。1曲目、西村朗作曲の『耿(こう)』。時間軸の上で緊張と弛緩が繰り返される曲に邦楽のための現代曲が数多く作られた結構昔(1970年代とか)の作品という印象を持ったが、2000年の作品だというのは意外だった。


 最後は今回の委嘱作品で世界初演となる「ぎんの音」。三味線の本條秀慈郎が参加しての演奏だった。本條は冒頭から弦をハジきつつ、サワリをいじって音色を変化させ続け、尺八も管の音色だけでなく息の音も混ぜつつそこに絡み合っていく。明らかに2種の邦楽器が発している音のはずなのに、そこからは広くアジアのイメージが流れ出してきた。まさに作曲者の思うつぼにはまったと言うべきだろうか。西洋的なハーモニーの感覚でいけば不協和音の一言で終えてしまうところだろうが、そういった浅薄な思考では理解できない世界が展開している。ギリギリの線で不調和にならずに絡んでいく小濱の尺八に、同様なアプローチを見せるオーネット・コールマンを思い出していた。さて次回はどんなリサイタルを見せてくれるのか。今から楽しみだ。



 

Akihito OBAMA "The 4th Shakuhachi Recital"

Shakuhachi "Penetrate Time and Space"


 I played some special instruments in the concert. The one is an ancient shakuhachi introduced from China around 7-8th century. And the next one is a hitoyogiri shakuhachi that was played between 15th century and 17th century. And also I played 2 kinds of honkyoku that were from Meian Shinpo-ryu repertoire and from KSK repertoire. After intermission, I played a brilliant contemporary solo piece composed by a great master Akira NISHIMURA. At the last I performed the new piece with Hidejiro HONJOH who is a young excellent shamisen player. The amazing piece was composed by Ms. Misato MOCHIZUKI who is a well-known fantastic composer in the world. I wanted to represent the future of shakuhachi after playing the pieces along the history of shakuhach.



[Date]

Wednesday, Deccember 22, 2021


[Venue]

MUSICASA


[Program]

1. Somakusha(by Ancient Shakuhachi -replica- )

2. Shote・Yasuda・Shukin(by Hitoyogiri -replica- )

3. Sangemon・Shokomon(Honkyoku)

4. San-an(Honkyoku)

5. Ko for Shakuhachi Solo (Akira Nishimura)

6. GHÏN NO OTO(Misato Mochizuki)*World Premiere

Commissioned by Akihito OBAMA


[Artists]

Akihito Obama (Shakuhachi)

Hidejiroh Honjoh (Guest,Shamisen)

Misato Mochizuki (composer)








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