虚実の間を行き来する尺八の歴史。真実を求めれば求めるほどその迷宮に迷い込んでしまう。邪念を振り払おうと必死に本曲に向かうとき、その清冽な響きが答えを導いてくれる。時代の波をくぐり抜け伝承されてきた尺八本曲。清濁を併せ呑むそのエネルギーの源泉は何なのか。
江戸時代に花開いた尺八芸術は、その由来や起源を中世の禅・文化に求めて来ました。今回は 『尺八の中世』 をテーマに、尺八文化の萌芽に迫ります。
1部では、鎌倉時代からの伝承とされ、尺八本曲の中でも最も大切にされてきた「古伝三曲(三虚霊)」を古い流派・形態順に演奏します。また2部では、中世の尺八《一節切》を吹いた一休禅師に焦点をあて、一節切曲(復曲)、一休禅師作とされる「紫鈴法」、そして終曲には桑原ゆう氏に委嘱した、一休をテーマにした新曲を吹奏します。また、書と空間演出を華雪氏が担当。「尺八の中世」を多面的に表現いたします。
【タイトル】
第5回 小濱明人 尺八 リサイタル「風狂~尺八の中世」
【開催日】
2022年11月1日(火)
【場 所】
東京都杉並区 杉並公会堂小ホール
【演奏曲目】
1部:古伝三曲の世界
「艸 霧海篪」 旧京都明暗寺所伝
「虚 鈴」 京都明暗寺所伝
「虚 空」 横山勝也伝
2部:一休禅師の世界
「大物・コロビ手」 一節切尺八-復元楽器-による
「紫鈴法」 一休禅師御作(明暗真法流)
「狂雲と佳月」 桑原ゆう作曲 ※委嘱初演
【出演者】
小濱明人(尺八)
【委嘱作曲家】
桑原ゆう(作曲)
【書/舞台演出】
華雪(書)
「第5回 小濱明人 尺八 リサイタル」コンサートレヴュー/フシミススム(編集者/MADURO ONLINE)
小濱明人さんの尺八を久しぶりに聴くことができた。季節が変わるたびに「そろそろ聴きに行きたいなあ…」なんて思いつつも、怠惰な性格もあってしばらく足が遠のいていたが、やっぱりライブは格別。同じ音と空間を共有できて、小濱さんの現在地を目の前で再確認できて大満足だった。
芸術の世界では、先人たちが培ってきた「伝統」をどう解釈し、反映させるかが重要なポイントの一つになっているように思う。金科玉条のごとく伝統に忠実な人もいれば、ひたすら逃れようとする人もいる。でも尺八の場合、どちらか一方に振り切るのは難しい。
小濱さんは尺八の歴史について「虚実が入り混じる」と表現していた。自分は尺八について詳しいわけではないけれど、たぶんそうなんだろうと思う。虚無僧の伝統は普化宗の解体によって一度途絶えているし、ましてや中世の一節切~尺八がどんな感じだったかなんて断片的にしか分からないはず。だから尺八の伝統とは何なのか、どれが「虚」でどれが「実」なのか、というのを見極めるところから始めないといけない。
それを手探りで、長いことやってきたのが小濱さんだ。いまだ実体の見えない伝統と向き合いながら、令和の時代にふさわしい尺八のあり方を追い求める。きっと正解とか結論は無いんだけど、やっていることは至極明快で迷いがない。恐れ多くも自分がもし尺八の演奏家だったら、今の小濱さんに近い姿を目指していたかもしれない、なんて考えたり…。
今回のような本曲ベースのリサイタルはもちろんだけど、現代的なコラボもカッコいいんだよなぁ。また観に行かせていただきます!
Akihito OBAMA "The 5th Shakuhachi Recital"
FUKYO ~Shakuhachi in the Medieval Time~
[Date]
Tuesday, Deccember 1, 2022
[Venue]
Suginami Public Hall
[Program]
Part 1:The world of Koden-Sankyoku
1. So Mukaiji (Old Myoanji Temple)
2. Kyorei(Myoanji Temple)
3. Koku(KSK/Katsuya Yokoyama tradition)
Part 2:The world of Ikkyu-zenji
1. Daimotsu・Korobite(by Hitoyogiri -replica- )
2. Murasaki Reiho (Ikkyu-zenji)
3. Lingering Clouds and Clear Moon(Yu Kuwabara)*World Premiere
Commissioned by Akihito OBAMA
[Artists]
Akihito Obama (shakuhachi)
Yu Kuwabara (composer)
Kasetsu (carigrapy)